2017.08.06更新

癌の治療といえば、前述通り外科手術、化学療法、放射線療法が主でありますが、近年人の医療においてこれに「免疫療法」「温熱療法(ハイパーサーミア)」が加わり、この5つの治療を柱として「集学的癌治療」と言われるようになりました。  

 

外科手術は摘出可能であれば最も確実な方法です。しかし、すでに癌が転移していた場合、また他の重い病気にかかっており麻酔をかけることが難しい場合など、手術が困難なことがあります。

化学療法とは、腫瘍の種類、適応、副作用を考慮して抗がん剤を投与することです。リンパ腫などの腫瘍においては非常に高い効果があると認めらます。

放射線療法は、癌に対し放射線を当てる治療であり、癌によっては非常に有効な治療です。しかし、設備の問題上当院では行うことはできず、大学病院等の2次診療施設で行う必要になります。

 

しかし、

1) 現在、外科手術が不適応で有効な治療法がない

2) 手術および抗がん剤、放射線治療の効果が得られない

3) 抗がん剤や放射線の副作用が強くて続けられない

4) 抗がん剤や放射線治療の負担を少なくしたい

5) 身体の全身状態が悪く積極的な治療が行えない

 

 

上述の理由により、外科手術、化学療法、放射線療法が行えない場合、もしくは従来行っている治療による身体の負担を少しでも軽減したい場合、これらの従来の治療に以外に、副作用の少ないICG修飾リポゾームを使った温熱治療を主軸に、高濃度ビタミンC療法および丸山ワクチンを使った免疫療法の併用を、動物の病状、費用面と相談しながら治療法の一つとして提案させていただく事ができます。 今回半導体レーザーを導入する事によりこれらの治療を提案する事が可能になりました。

 

<ICG修飾リポゾームを使った温熱療法>  

温熱療法とは、癌が熱に弱いことを利用して、腫瘍組織の温度を上げて癌を死滅させる方法です。この方法は光線力学的温熱化学療法と呼ばれるもので、化学療法剤により癌を死滅させやすくした腫瘍にレーザー光線を当てて温度を上げ、癌を死滅させます。 また、温熱療法には熱ストレスによって誘導発現するHSP(ヒートショックプロテイン)などによる抗原提示の亢進とリンパ球の活性化を促進するという免疫活性化作用もあります。従来の温熱療法は、表在性の腫瘍がターゲットで、薬剤を癌の部位に注射で入れてました。ICG修飾リポゾームは、インドシアニングリーンという色素をもった粒子で、ICG修飾リポゾームは血管内に投与することができ、腫瘍組織は正常組織に比べてこの粒子が集まりやすくなっています。血管内に投与されたICG修飾リポソームは腫瘍組織に集まり、体外からレーザー照射する事によって温度を上げ癌を死滅させることができます。リポゾームは温熱によって中から薬剤を放出するため、体のほかの部位で抗がん剤の副作用が出てしまう可能性は低く、効率的にがんを治療することができます。これまで深部腫瘍に対しては、放射線治療以外に有効な治療法はありませんでした。特に肺転移症例に関しては、放射線治療も有効ではありません。ICG修飾リポソームを用いることにより、これまで治療不可能と言われてきた胸部転移症例などの腫瘍に対しても治療が期待できる可能性が出てきています。このICG修飾リポゾームを使った温熱療法は鳥取大学獣医外科学教室が千葉大学医学部と共同研究を行って開発された最新の技術です。

 

<高濃度ビタミンC療法>  

高濃度ビタミンC点滴療法による癌治療が、近年人の医療で注目され効果をあげています。その主たる薬理学的機序は、高濃度のビタミンCによって細胞周囲に発生する過酸化水素が選択的に癌細胞を攻撃することです。正常な細胞では、カタラーゼなどの抗酸化酵素が過酸化水素を水と酸素に安全に分解するため障害を受けません。また、ビタミンCは、免疫システムを刺激(インターフェロンの産生、マクロファージの食作用の亢進、NK細胞数の増加と遊走能の亢進など)して、免疫力を高める作用も持っています。すべての癌にチャレンジする価値のある治療ですが、外科手術、化学療法、放射線療法と言った癌3大治療に変わるものではなく、代替療法の位置付けとなるため、他の治療法と併用するとより効果的となります。

 

<丸山ワクチンによる免疫療法>  

「丸山ワクチン」とは、日本医大の丸山医師(皮膚科)が結核患者にがんが少ないことに注目し、研究を重ねられた結果、結核菌抽出物に抗がん作用があることを発見しました。この製剤を「丸山ワクチン」と命名され、現在でも日本医大で有償治験(未承認の治療薬の有効性や安全性等の科学的データを得るための臨床試験。薬品代は有償)として、丸山ワクチン治療が行なわれています。丸山ワクチンと成分が同一なものとして、「アンサー20」(ゼリア新薬)が販売されています。医学領域においては、がんに対する放射線療法時に生じる白血球減少症に対し、免疫力を回復させるために使われています。丸山ワクチンは免疫療法の一種であるため、他の免疫療法と併用することがより効果的となります。  

獣医領域においては、まだ一般的とは言えませんが、鳥取大学獣医外科学教室の岡本芳晴教授が、ICG修飾リポゾームと光を用いた光線温熱療法を主軸とした、高濃度ビタミンC療法、丸山ワクチンの併用療法の研究が行われています。ICG修飾リポゾームを用いた温熱療法がこの中で最も効果的ですが、高濃度ビタミンC療法、丸山ワクチンの併用を行うことで相乗効果が期待できより有効な治療法となります。 これらは従来の外科手術、抗がん剤、放射線治療の完全な代わりになることはありませんが、治療における身体の負担や副作用がほとんどありません。転移や他の病気で身体の状態の良くない動物達に対して、何かをしてあげたいと望む飼主様に対して、期待に応えうる治療方法の提案となります。動物の病状、費用面を考慮し相談しながら行なっていく事ができますので、検査や費用について、ご質問やご要望がある方は気軽に獣医師もしくはスタッフに尋ねてください。

鳥取大学のホームページ(http://vth-tottori-u.jp/wp-content/uploads/2013/07/topics.vol_.15.pdf)も参考にして下さい。

投稿者: 佐橋動物病院

2017.08.06更新

当院は中小企業庁:平成28年度「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」の補助事業者に採択されました。同補助金は、小規模事業業者が実施する、新しいサービス等における設備投資などを支援する補助金制度です。昨年に続き2年連続で採択されました。昨年は、循環器診療に力を入れるため、日立製の超音波診断装置Arietta70を導入しました。本装置は、人間の医療において大学病院等の専門機関の検査室で使用されるような最上位機種になります。

今年は半導体レーザー、動物用心電計と動物用ICU装置を導入しました。

半導体レーザー

<半導体レーザー> 

レーザー機器は、従来の治療法に比べて侵襲や副作用が少ないことなどから、動物の生活の質の向上に役立つ治療法として大きな期待されています。レーザー光を利用した温熱療法を始め、レーザーメスを用いる手術、レーザー照射による治癒、治療領域は多岐にわたります。外科手術時には高出力のレーザーを使用します。また低出力レーザー治療(Low Power Laser Therapy- LLLT)は、主に疼痛の緩解、血行促進、創傷治癒の促進、消炎効果を目的として行います。それゆえ広範囲な慢性疾患、特に疼痛を伴う症例に使用することができます。レーザー治療中は、動物は痛みを感じません。人間と同様、動物にも各々のツボがあり、使用するレーザーの種類、照射箇所、照射回数、照射時間等はその動物の容態に合わせて、鍼灸を応用した治療をすることができます。またレーザー治療は、適切に使用すれば無痛、無侵襲で行うことができ、合併症や副作用はほぼ認められません。半導体レーザーによる治療は、動物に対して治療に伴う大きな苦痛を与えず様々な治療を行うことができます。

 

動物用心電計

<動物用心電計> 

循環器診療をより充実させる為に導入しました。心臓内に伝わる電気信号をとらえて、心臓の動きを波形で記録する検査で、心電図の波形の異常、不整脈の有無を調べます。筋電フィルターが従来よりしっかりしており、動物達が緊張で震えても綺麗な心電図を記録することができます。

動物用ICU装置

 

<動物用ICU装置> 

緊急時、診断を行った後、適切な治療を行う必要があります。緊急時、人の医療と同様、酸素治療が救命に大きく左右することがあります。ICUとはIntensive Care Unitの略で集中治療室のことです。動物用ICUは動物の病状に合わせて、ケージ内の酸素濃度、温度、湿度をきめ細かに設定することができます。呼吸器・循環器系をはじめとするあらゆる重症疾患やまた手術後の回復室としても使用することができます。速やかに高い酸素濃度環境にできるだけでなく、温度、湿度をコントロールすることで、衰弱した動物に対してストレスを最小限に抑えて治療を行うことが可能になります。大型、中型ICUを導入することで、小動物から大型犬まで幅広い対応ができるようにになりました。  

これらの機器を導入する事により、全体的な診療技術の強化に繋がればと考えています。

検査や費用について、ご質問やご要望がある方は気軽に獣医師もしくはスタッフに尋ねてください。

 

 

 

投稿者: 佐橋動物病院

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